戦争にファンタジー要素を混ぜた仮想戦記『皇国の守護者』のあらすじ・感想・見所紹介。明治時代頃の日本的な"皇国"と西洋っぽい"帝国"の間の架空戦記を描いた『皇国の守護者』龍と人が共存する世界、サーベルタイガーも軍用猫として戦うという、ファンタジー好きなら題材のみで飛びつきそうなこの作品の魅力をご紹介します。
このページを読めば『皇国の守護者』のあらすじや登場人物、見所を十分理解できる内容となっているので、是非最後までご覧ください。
日露戦争×ファンタジー『皇国の守護者』のあらすじ
まずは『皇国の守護者』の作品の概要やあらすじについて紹介していきます。
作品の概要について▼
- 作者:佐藤大輔・伊藤悠
- 掲載誌:ウルトラジャンプ
- 巻数:全5巻
概要…
人と龍が共存する世界で、小さいながらも貿易によって繁栄していた〈皇国〉と、その貿易赤字を解消するために海の彼方から侵略してきた〈帝国〉との戦争、それをきっかけとして激化する〈皇国〉内部の権力闘争を描く。
長い間平和に暮らしていた皇国に超大国の帝国が突然の侵略圧倒的な負け戦のなか、友軍を撤退させるため数万の侵略軍をわずか600人で足止めしろと命じられた兵隊さんが、サーベルタイガーを実戦配備した剣虎隊を指揮し、圧倒的不利な状況で大軍に立ち向かうというストーリー。
誌事情により全5巻とストーリー自体は短いながらも戦略モノとしての内容はとても濃い。
人間臭い『皇国の守護者』の登場人物たち
『皇国の守護者』の登場人物はとにかく泥のような眩しく、キャラ一人一人の目力が凄まじいです。そんな個性豊かなキャラを一部ご紹介します。
新城直衛
サーベルタイガーを有する〈皇国〉の中尉・剣虎隊の隊長。
圧倒的不利な状況であらゆる奇策を巡らせ戦場の流れを読み、大胆かつ冷酷に作戦を遂行する反面、戦場で恐怖に震えたりする歪なキャラクター。
勇猛に見せかけて実はかなりビビリというギャップ、人の弱さと新城の頼もしさ、剣牙虎の可愛らしさに状況の最悪さ。その全てが愛おしい。 泥臭い戦闘の中で、臆病さと果敢さを併せ持ち名言を残しまくる。
千早
この作品のヒロイン主人公の相棒サーベルタイガー千早
強くてモフモフでかわいくて悪夢的に凶暴な一面を持つ。
ユーリア・ド・ヴェルナ・ツァリツィナ・ロッシナ
帝国側の元帥で、皇国侵攻作戦の総指揮官。
ユーリア・ド・ヴェルナ・ツァリツィナ・ロッシナ殿下は、気高く美しく猛々しく聡く、冷徹かつ苛烈な性格で、ブロンドの髪を持ついかにもな強キャラ
西田
西田は前髪短めの爽やかイケメン。新城とは気心の知れた後輩であり、千早とも仲がいい冒頭にて捨て駒として散華し、そして敵将より天晴と評されて直接手を下される。
最期の闘いが軍人として誉り高く、散り際までも華々しいキャラクター。
アンドレイ・バラノヴィッチ・ド・ルクサール・カミンスキィ
類い稀な美貌の下に野心を滾らせる帝国側の大佐。
名門カミンスキィ家に生まれ軍人としての才能も非常に高い。父親の散財により傾いた家を救うため幼少期母親にロリコンの変態へ売られ、そいつが腹上死するまで家族のため男娼扱いに甘んじる。
しかしようやく戻った家で「けがらわしい」と姉母から拒絶され、その後女将軍の愛人をしながら野望を抱く…という不遇の過去を持つカミンスキィ大佐
『皇国の守護者』の見所3選と絶版について…
架空戦記モノの最高傑作『皇国の守護者』にはたくさんの見所があります、その中でもおすすめのポイントがたくさんあるので、注目すべきポイントを厳選してご紹介していきます。
日露戦争を彷彿とするロマンてんこ盛りの世界観
『皇国の守護者』は、日露戦争を彷彿とさせる描写が随所に見られる戦記モノ。龍と聖獣・魔物、そして魔法が存在する世界で小国である皇国〈日本がモデルの国〉と、侵略してきた帝国〈ロシアがモデルの国〉との戦争と〈皇国〉内部の権力闘争を描いている。
魔法による遠隔通信、人語を解する龍、両性具有者などの存在するファンタジーであり、産業革命前夜の技術で生身同士が殺し合う悲惨な架空戦記でもある、日露戦争当時のような時代背景ながら、科学技術や生態系が異なる独自の世界観、キャラクターの心情と表情の描写など、色々内容てんこ盛りで終始惹かれっぱなし。
「モフモフのサーベルタイガーと共闘するファンタジー要素ありの戦争漫画」ってワードに惹かれる人は読んでみる価値があると思います。
他の作品には見当たらないキャラの表情
話も面白いし絵もうまい。特に最高なのがキャラのひねくれた感じの笑い顔。新城直衛含めた人物の心理状況が表情として見事に表現されている。
主人公の新城直衛が「地獄に向けてまっしぐらだ」と悪相を綻ばせる瞬間、強烈な狂気さに魅力を感じずにはいられない。笑顔が素敵な漫画です。
戦略・戦術モノとしての内容はとても濃い
前述した通り諸国の思惑・権謀術数・進化するテクノロジーと戦術をこれでもかと絡めて戦争する竜が出てきたりと、表面的にはファンタジーの世界だけど、張り巡らされた権謀術数、それぞれの戦略・戦術が仔細に記されている点で、そのことがファンタジーものながら圧倒的なリアリティをもたらし、戦争の狂気と生々しさ、戦略性があって面白い。
登場人物の台詞、使い所や魅せ方が上手く、見開きを使った突撃シーンなどは圧巻。 熱量がすごく止まることなく一気に読み進められる作品です。
作者は亡くなって未完、絶版で電子化も無し
「皇国の守護者」は、作者の佐藤大輔先生が2017年3月22日に急逝している。
1998年に第1巻が刊行された。2005年刊行の第9巻以降執筆が途絶えていたが、作者の佐藤が2017年3月22日に死去したため[1]、本作は未完となった。また、漫画版は2018年3月には著作権継承者の意向により絶版となり、電子書籍化の予定もない
その後、著作権を相続した遺族がガッチガチに囲ってるようで、合意が得られず、アニメ化はおろか電子書籍化・再販も頓挫している、惜しまれる打ち切り完結全5巻。なにしろこれから戦争ですので本当に残念…
50年経って著作権切れるのを待つしかないかない…惜しい…
集英社の広報部は3月6日、J-CASTニュースの取材に対し、次のようにコメントした。
「『皇国の守護者』については、著作権承継者のご意志により、出版を継続しないこととなりました。電子書籍化の予定もございません」
佐藤大輔作品を読みたい人は『征途』をオススメする。
亡くなられてしまった作者唯一の長編完結作にして、これも架空戦記モノ、歴史改変が効いた親子三代に渡る壮大な海と大和型戦艦のお話です。
まとめ
最後までご覧いただきありがとうございます。『皇国の守護者』を紹介しました。この作品は真面目におすすめしたい漫画ではあるんだけど、紙、電子書籍とも絶版ゆえに気軽に推せないという難点があります。読みたい人は頑張って入手してみて下さい。
龍やサーベルタイガー、超能力が存在しながらも、近代的な侵略戦争が勃発するといった舞台設定から惹かれる、主人公がクズくて最高な漫画です。