人間魚雷「回天」が題材『特攻の島』珠玉の戦争漫画の感想(ネタバレ)

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人間魚雷「回天」が題材『特攻の島』珠玉の戦争漫画の感想

ブラックジャックによろしくの作者・佐藤秀峰氏の描く、第二次世界大戦の末期に玉砕作戦として多くの若い命が犠牲となった人間魚雷「回天」を題材にした戦争作品「特攻の島」

それではこの『特攻の島』の登場人物、あらすじ、見所についてご紹介していくので是非最後までお付き合いください。

 

 

 

特攻兵器・人間魚雷「回天」『特攻の島』について

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まずは『特攻の島』のあらすじや作品の概要についてご紹介していきます。日本で戦時中に実際に使われた人間魚雷回天の隊員たちの人が変わって行く姿、心を無くしまた取り戻す姿がたまらない、その全貌がこの漫画にはあります。 

 

『特攻の島』の詳細▼

『特攻の島』は「海猿」や「ブラックジャックによろしく」で有名な佐藤秀峰さんの作品です。佐藤さんは「海猿」が有名ですが、最近の新連載「Stand by me 描クえもん」で「海猿」の出版社から受けた仕打ち「契約書」「原稿料」「アシスタントの給料…」漫画業界の闇と裏側を暴露しまくった漫画を描いているので是非呼んでみて下さい。

 

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『特攻の島』はこんなお話

あらすじ

「生還を期さない兵器」特殊兵器への志願を問われた時、少年たちが受けた説明はそれだけだった。様々な憶測が飛び交う中、志願した少年たちはある島へと送られる。その島で少年たちが見たものは…!

太平洋戦争時に実在した人間が操縦する魚雷「回天」に搭乗した青年たちの物語、なぜ回天は作られたか、なぜ何のために志願したのか…本当に考えさせられる…。作品はとても面白いが…確率的に大きな戦果も望めないのに致死率100%の作戦を遂行するなど、非合理性がまかり通っていた当時の状況に深い憤りを覚える。

 

表情がとても印象に残る 『特攻の島』登場人物たち

「特攻して死ぬ」以外に選択肢の無い登場人物に表現が適切かは不明だが胸が熱くなる、それぞれの登場人物の心理描写・戦争で叩く意味、生きる意味、死ぬことの意味をひりひりと感じさせられ、当時の社会というものがより理解しやすくなっています。

それでは『特攻の島』の登場すキャラクターを紹介していきます。

 

渡辺裕三▼

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(出典:特攻の島)

渡辺裕三は『特攻の島』の主人公

大東亜戦争末期、農村の極貧家庭に生まれて、父親が病弱で戦争にいけず、周囲に「非国民」と虐められてる。家族は常に飢えていて、あまりに苦しい人生に意味を見出せたこともない、それゆえに金と食物と生きる意味を見つけるため、魚雷の目となり米艦へ体当たりする為志願する。 

 

関口政夫▼

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(出典:特攻の島)

関口政夫は主人公の同期であり親友。

死は全く恐れていないが、無意味な死は強く拒み、回天に乗り死ぬ意味を見出せずにいるが死ぬことを決意し死ぬ意味を見出す関口の最期は何度読んでも泣く。

 

板倉光馬(実在した人物)▼ 

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(出典:特攻の島)

水雷長として真珠湾攻撃に参加した経歴を持つ回天指揮官

かなりオッサンに描かれているが出撃命令を出していた当時30歳とかなり若い、再三に渡り、回天隊と共に潜に出撃を希望していたが、軍上層部に認められないまま終戦をを迎える。(2005年・95歳で亡くなっている。)

作中は冷酷な軍人として描かれているが、酒飲みで上官ブン殴ったり暴れたりして問題児だった一方、激しいリンチにより逃亡者や自殺者が出ていた当時の加賀艦内を改めたとされ、元士官はその人柄や武勲をたたえていて非常に好印象を受ける。

 

仁科関夫(実在の人物)▼

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(出典:特攻の島)

仁科関夫は人間魚雷を海軍に実用化を提言した開発者。

尊敬する黒木に少しでも近づくため回天の開発に没頭する、創始者は作るだけ死なないこともあるが、人間魚雷回天の開発者黒木大尉(訓練中に事故死)・仁科関夫中尉は第1回作戦で出撃し特攻して戦死している。

 

『特攻の島』の見所について▼

「生きる意味、死ぬ意味とは何なのか」を悩む姿を描き漫画という手法で“戦争”を伝えてくれる『特攻の島』の見所をいくつか伝えたいと思います。

 

死ぬ意味、生きる意味を自問自答する姿を描いた作品

  • 生まれてきた意味と死んでいく意味。
  • なぜ回天は作られたか、なぜ志願したのか…

主人公は回天が兵器として全く役に立たないことを知っているし、守るべきものも勝利への期待もない。そんな中「人間魚雷(自殺)」に意味を見出そうとする。若者たちが絶対的な「死」の中で「生きる意味、死ぬ意味とは何なのか」を悩む姿がこの作品の大きな見所となっています。

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(出典:特攻の島)

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(出典:六道の悪女たち)

この作品は、「普通の人間の普通の感情」をリアルに描いて、誰もが人として薄々気づいてることを言語化してるセリフが多く、主人公を通して当時の日本人の男性が背負っている業や、覚悟や、恐怖や、仕事への悲壮感などを、時代をさかのぼって感じとれる。

追い詰められながらも次第に自分の運命を受け入れ「死」のもつ意味を主人公が見つけ出していくという、人間の根源的な部分を大きく揺さぶられ、回天と当時の日本海軍を理解する上ではとても分かりやすい漫画となっています。

 

リアルな迫力のある描写で68年前の戦争を描く  

史実に基づいて描かれてたストーリーは勿論、戦闘シーンの迫力と、悲壮感漂う基地と潜水艦内の雰囲気、爆雷の水面表現を描き切る画力まどの描写が素晴らしい。

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(出典:特攻の島)

特に登場人物の表情から狂気の時代を怖いくらいに感じ、全巻通して常に緊迫感のある作品に仕上がっている。

 

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人間が魚雷となり操縦する“回天”

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出撃すると二度と生きては帰れない海の中、104人もの搭乗員が海に散った。

軍部の暴走に国の舵取りを預けてしまった時の政府と、戦争を止めることなく加担者となった大人たちが未来ある若者たちの命を奪った愚行、そのなれの果てが「回天」、「回天の戦死者の中で実績を上げた人は数少なく不毛な作戦だった」と振り返っている

18歳の回天特攻隊員の遺書 死は怖くないという彼が怖かったものとは、、、 】回天訓練基地が残る大津島は機会があれば是非一度立ち寄ってみて欲しい。

空からの特攻作戦とは違う隊員の遺書や、異質で過酷な訓練の過程を拝見でき、トロッコで回天を運搬した時のトンネルも潜れます。

 

 

『特攻の島』はこんな人におすすめしたい

最後まで読んでいただきありがとうございました ^^) _旦~~

『特攻の島』は「生と死」を常に描いていて、日本がどのように第二次世界大戦を進めてきたか、現代を生きる自分達が戦争を考えるきっかけになります。佐藤秀峰さんの劇画タッチのあまり知られていない 「回天」の悲劇と、死の悲しみ、それに対しての生き残る者の葛藤、戦争ってなんだ?、命ってなんだ?、その答えの一つが描かれた大作です。是非読んでみて下さい。