感想/見所紹介『ヴィンランド・サガ』最強の民族、ヴァイキングの壮大な叙事詩【ネタバレ】

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プラネテス」を描いた幸村誠先生の人気作品『ヴィンランド・サガ』のあらすじ・感想、見所紹介。

 

『ヴィンランド・サガ』というタイトルで、壮大で濃密でエンターテインメント作

魅力的なキャラクター、緻密なストーリー、描きこまれた作画、すべてが極上の完成度誇る作品です。その魅力を少しでも伝えられるようにご紹介します。

 

このページを読めば『ヴィンランド・サガ』のあらすじや、登場人物・見所を十分理解できる内容となっているので、是非最後までご覧ください。

 

 壮大な世界観を描いた至玉の1冊『ヴィンランド・サガ』あらすじ

まずは 『ヴィンランド・サガ』の作品概要やあらすじについてご紹介します。

 

作品の概要について▼ 

  • ジャンル:歴史・アクション
  • 作者:幸村誠
  • 掲載誌:週刊少年マガジン・月刊アフタヌーン
  • 巻数:既刊22巻(2019年6月現在)

 

11世紀の北欧で戦に明け暮れるヴァイキングの世界を舞台にした作品

ヴァイキングが躍動する時代に父親を殺され、復讐に囚われ、親の仇を討つために、復讐の為に仇の船に乗りヴァイキングとなった少年トルフィンの成長譚。

 

ストーリーが進み、復讐の為だけに生きる主人公が、環境が変わるにつれて心境や目的が変化していき、真の戦士とは、本当の平和とは、と自分も考えさせられる

骨太で重量感のあるすべてが極上の完成度を誇る作品。

 

あらすじについて▼

千年期の終わり頃、あらゆる地に現れ暴虐の限りを尽くした最強の民族、ヴァイキング。

 

その中にあってなお、最強と謳われた伝説の戦士が息子をひとり授かった。

 

トルフィンと名づけられた彼は、幼くして戦場を生き場所とし、血煙の彼方に幻の大陸“ヴィンランド"を目指す。

 

実在した『ヴィンランド・サガ』の登場人物たち(ネタバレあり)

『ヴィンランド・サガ』の登場人物は性格や口調がが現代人で馴染みやすいのが特徴

絵も話も極めて素晴らしいのですが、なんといっても登場人物の9割は髭と筋肉という素敵仕様、そんな彼らをご紹介していきます。

 

トルフィン 

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(出典:『ヴィンランド・サガ』)  

 

元海賊の父の元に生まれた主人公のトルフィン。

家族に恵まれ幸せに暮らしていたが、父が元偉大な海賊だったために恐れられ謀られ、父を目の前で殺されてしまう。

トルフィンの人生は憎しみで歪み、復讐のみに費やされてしまう。

 

だが、この「復讐」からトルフィンの物語は始まり、少年期の憎悪と殺戮の中で生きる主人公トルフィンが、復讐から解き放たれて生きる道を悟る迄の中盤からが本番。

 

※主人公トルフィンは、史実の人物で、コロンブスのアメリカ到達よりも五百年近く前に、アメリカの地を踏み、入植を果たした男

 

トールズ

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(出典:『ヴィンランド・サガ』)    

 

トルフィンの父。

かつてデンマーク王国のエリート軍・ヨーム戦士団に所属していた戦士で、ヨームの戦鬼(トロル)のあだ名を持つ。

人柄は暖かく、寛大な心を持ち、ヴィンランドに息づく者たちの逞しさを象徴する存在

 

妻を娶り、娘を授かったことで戦いに虚しさを覚え、死を偽装して軍を抜けた経歴を持ち、昔の同僚に殺害を依頼された海賊によって罠にかかり、主人公トルフィンの目の前で討たれてしまう。

 

「お前の敵は誰なんだ。よく聞けトルフィン。お前に敵などいない。

誰にも敵なんていないんだ。

傷つけてよい物などどこにもいない。」

このトルフィンに残した言葉が、その後の物語に大きく関係してくる。

 

アシェラッド 

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(出典:『ヴィンランド・サガ』)    

  

傭兵集団アシェラッド兵団の団長。黒幕は別にいるものの、主人公の父親を謀殺したオッサン。以後、仇としてトルフィンから命を狙われるようになる。

 

トルフィンの生物学上の父親はトールズで間違いないが、立ち塞がる倒すべき父というか、アシェラッド自身も、そのつもりはなかったけど、トルフィンに対して父のような思いを抱いている。

 

トルフィンの生き方に絶大な影響を与え

トルフィンの苦しみや迷いに呼応するように現れる。なんという業と因縁か。

仇なんだけど父親のような…こんな師弟関係初めて見る

 

悪人でもなく善人でもなく、でも彼なりに軸になる価値観があって、そこは通す渋さに惚れる。

 

トルケル

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(出典:『ヴィンランド・サガ』)

 

完全にイカれきった戦闘狂であり生粋の戦士。戦い方は斧二刀流をぶん回して戦う

部下たちと酒を飲んでいるときは全長30mくらいに見えるが、作中で最も大きく描かれたシーンでは、全長200mくらいある

 

人は殺しまくるけども明るくて裏表なくて豪快なオッサン

指が斬れても目をえぐられても顔色一つ変えない強靭な肉体と精神、戦場で死ぬことに一部のためらいもない覚悟。裏のない男気あふれる性格。なのにおちゃめ。

 

かつてデンマーク王国のエリート軍・ヨーム戦士団に所属し、トルフィンの父、トールズとも旧知の仲であり、自身が唯一勝てなかった勇者と認めていた。

 

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(出典:『ヴィンランド・サガ』)

 

トルケルも入ってる漫画・アニメの「最強キャラ」についての記事はこちら▼

 

クヌート

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(出典:『ヴィンランド・サガ』)

 

「クヌート」は、デンマーク王・スヴェンの次男。

クヌート王子も『ヴィンランド・サガ』を語るうえで外せない人物です。

女性のようなっ顔立ちで、キリスト教を信じた臆病な王子は大事な人との死別後、愛の本質に気づき、神へと叛逆を犯すことを誓い覚醒する。

そして荒れたヴァイキングの帝王となっていく。用紙の変貌具合も注目

 

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(出典:『ヴィンランド・サガ』)

 

エイナル

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(出典:『ヴィンランド・サガ』)

 

物心ついたときから奴隷として生活していた「エイナル」

目的を果たせず奴隷として農場に売られたトルフィンと出会い、戦士として生きてきたトルフィンに、他の生き方を提示しながら大きな影響を与え、共に歩む親友となる。 

 

レイフ 

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(出典:『ヴィンランド・サガ』)

  

トルフィンに自身の若いころの冒険譚を聞かせ、草原の地・ヴィンランドの存在についての話をよくしていた。

 

トルフィンが村を出て復讐に取りつかれ行方不明になってからも彼を探し続ける。

その後、トルフィンが願うヴィンランドへの渡航のよき理解者となり、協力していく。

 

 「レイフ」「トルフィン」と共には、"ヨーロッパ大陸から海を渡ってアメリカ大陸に史上初めて到達したと伝えられている実在の人物。

 

壮大かつ重厚なテーマ『ヴィンランド・サガ』の見所5選(ネタバレ含む)

バイキングが活躍してた頃の北欧を舞台に、主人公トルフィン

彼の壮絶で壮大な人生を横で見ているかのような、凄まじく内容の濃い『ヴィンランド・サガ』には見所がたくさんあります。

その中でも特におすすめのポイントを5つ厳選してご紹介します。

 

ヴァイキングを題材とした歴史モノ

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(出典:『ヴィンランド・サガ』)

 

北欧のヴァイキングと呼ばれる略奪、戦争を繰り広げる戦士が席巻した時代

当時のヴァイキングの略奪の文化、容赦のない残虐表現、村を焼き払い「戦争」「略奪」「強姦」「奴隷商人の人身売買」などを繰り返す様を容赦なく描いている。

 

主要なキャラクター達が行ってきた蛮行には一片の酌量も許されるものではないが、それでも、それぞれの人格には血が通っており物語を盛り上げる要因となっている。

 

少しエグい部分は多いが、当時の武具・装備なども細かく描くなど、時代の背景や文化、風習など北欧の歴史も学習でき、史実の時間軸に沿ったとても面白い歴史モノとなっています。

 

 トルフィンの成長とともにストーリーも変化していく奥深さ 

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(出典:『ヴィンランド・サガ』)

 

壮大・重厚といった表現が使われるこの作品だが、壮大といっても物語の規模ではなく、主人公トルフィンが復讐に囚われ、人殺しに染まり奴隷へと堕ち、そこから生きることの意味を探りながら楽園を作ろうとする苦難の足取りが底なしに深い。

 

作者がヴァイキングという残酷な題材を選んで描き続けた結果

物語の本当のテーマを見つけ出し、最高潮の盛り上がりとなったのが奴隷編。

 

「敵なんていない、誰にも敵なんていない」

父の死、殺戮の傭兵時代、奴隷編を乗り越えて「本当の戦士」に変貌しようとするトルフィンの成長がこの物語を壮大なモノにしていく。

 

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(出典:『ヴィンランド・サガ』)

 

父トールズの仇であるアシェラッドを殺すために生き続けたトルフィンが、死ぬ間際のアシェラッドよりその後の人生について問われるシーンは作中屈指の名シーン

 

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(出典:『ヴィンランド・サガ』)

 

奴隷というものを描いてる作品

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(出典:『ヴィンランド・サガ』)  

 

『ヴィンランド・サガ』は、当たり前に人身売買がある時代として話が進む。

ヴァイキングの感覚では奴隷は家畜同様財産で、市場で売り買いするのも当たり前

 

農民のキャラの皺や粗末な服からは、当時の過酷な労働や環境を想像させられ、奴隷、貧富、欲望、血筋、宗教など、あらゆるものが混ぜこぜとなり、色々な疑問や矛盾を孕んだまま、人々が生き、戦い、死に行くため、作品全体がドラマティック

 

自営農民、戦士、奴隷、そして商人・・。

主人公は当時のあらゆる身分を経験し、そしてどの階層にも新天地を求める人々がいる。明快だけど、とても考えさせられる。

 

画力が高く、迫力のあるバトルシーンは圧巻

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(出典:『ヴィンランド・サガ』)

 

画力めちゃくちゃ高いので、戦闘シーンは迫力がすごくて、「力が強いとはこういうことか...これは死ぬ...」となり「血しぶきのシーンは身体が痛くなる。」

また、感情表現の方法が非常に豊かで、喜怒哀楽だけでなくそれらが混じった微妙な感情を表現しており、キャラの表情には惹きつけられる魅力があります。

 

カッコイイ男性も可愛い女性も描けてアクションもド迫力で見やすい、幸村誠さんの描く凄まじい描きこみの絵はこの作品の大きな見所。

 

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(出典:『ヴィンランド・サガ』)

 

ヴィンランド移住は実らず開拓民全滅という史実が重くのしかかる

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wiki/ヴィンランド

 

現代を生きる僕たちは、レイフとトルフィンの平和で差別のない場所を目指した「ヴィンランド入植」は失敗し、結局コロンブスに「新大陸として発見」され、その後アメリカと名付けられ、1862年の解放令まで奴隷貿易の中心地になる事を知っている

 

この史実として、ヴィンランド入植が長期的には失敗していることはみな知っていること、これがなおさら暗い、この漫画は破滅に至るまでの物語でもある。

 

 

 

まとめ

最後までご覧いただきありがとうございます。

『ヴィンランド・サガ』を紹介しました。

 

 

基本的にヴァイキング側から追ってく感じなので、残酷と言うか、容赦無いと言うか、生々しいです。でも、そこが良い。耐性がある人には非常におすすめ。

アニメでハマった人もそうでない人もこれを機に是非読んでみて下さい。

 

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