『あれよ星屑』戦後の空気感が味わえる!ネタバレ・感想(見所紹介)
戦後を舞台に中国大陸の戦争で生き残ってしまった人間たちのドラマ。
日中戦争の閉塞感が伝わってくる『あれよ星屑』
では『あれよ星屑』のあらすじや登場人物、見所・感想をご紹介していきます
この作品の魅力を少しでも伝えられるよう頑張るので是非最後までご覧ください。
山田参助が描く『あれよ星屑』のあらすじ▼
「このマンガがすごい!2015」オトコ編第5位
「フリースタイル」「THE BEST MANGA 2015 このマンガを読め!」にて第3位
手塚治虫文化賞にもノミネートされた『あれよ星屑』のあらすじや、作品概要についてまとめていきます。
作品の概要いついて▼
- 作者:山田参助
- 掲載誌:月刊コミックビーム
- 巻数:全7巻
- ジャンル:戦争
あらすじ▼
敗戦直後の焼け野原の東京で復員兵である川島徳太郎は、闇市で雑炊屋を営む傍らで酒に溺れる毎日だった。
そんな折に軍隊時代の部下である黒田門松と偶然再会する。
黒田へ故郷に帰るように勧めるものの、若さに感けて無鉄砲に生きる黒田は川島の変貌ぶりに驚きながらもそのまま居着いてしまう。
酒に浸り死を見つめる男と生に翻弄される男二人、それを取り巻く人々の現在と過去の物語である。
戦後の東京を舞台に、辛い記憶を引きずりながらも逞しく生きる人々を描いた作品
戦後間もなくの闇市で働く男達と女達
泥沼化した二次大戦末期から戦後を過ごす復員兵の姿
無抵抗の「敵」を殺す場面や慰安所での横暴など目を背けたくなる描写もある。
当時の男の汗の匂いと、女の化粧の匂いが伝わってくるような傑作。
『あれよ星屑』の主な登場人物を紹介
『あれよ星屑』は出てくる登場人物の顔がどれもいい!
モブのキャラまでみんないい顔していて、登場人物一人ひとりの息づかいを感じる。
そんな『あれよ星屑』の登場人物をご紹介していきます。
川島 徳太郎
川島徳太郎は『あれよ星屑』の主人公
敗戦から1年あまり。ぼろぼろに焼け落ちた東京で、酒浸りの暮らしをしていたが、かつて死線を共にした戦友・黒田門松に再会し闇市で雑炊屋を始める。
川島徳太郎の回想で物語は進む。
黒田 門松
何も持たないけど生命力だけは溢れる復員した元軍人・主人公の一人黒田門松
毛むくじゃらの熊で、戦争時とかの野郎臭い男っぽい雄な顔とか、凛々しい顔、笑った時とかの可愛い顔など、色々な表情を見せてくれるキャラ
他にも▼
主人公の川島徳太郎と黒田門松をはじめとして、金子と舎弟三人衆
菊子にカンナ泉・・・心に傷を負いながらも、みんな優しい。
みんな、みんな愛おしい。決して明るいストーリーじゃないけど、みんな優しい。
とにかく凄い”漫画”の描写力『あれよ星屑』の見所(ネタバレ含む)
漫画としての凄まじい漫画力を魅せてくれる『あれよ星屑』にはたくさんの見所があります。そんな中でもおすすめのポイントを絞って紹介していきます。
生きる事に必死だった当時のリアルが伝わってくる
パンパン、戦災孤児、進駐軍用慰安施設、戦後日本の敗戦焼け跡グラフティ。
登場人物が結構なことをしているのに全く批判的な描き方をしておらず
読者も筆者も傍観者であれ!的な空気感で描写しているのが大きな特徴。
正気の人間達が暴力の渦巻く環境で、諦観や悪行を積み上げ、どんどんどん狂っていく
登場人物一人ひとりが、苦難と悲劇を背負いながら、それでも日々を生きていくしかない等身大の人間として丁寧に描かれていている。
筆、画の変化そのものが世界の密度をあげる
絵も当時の雰囲気に沿ったレトロなタッチでありつつ、安定した確かな画力でシリアス・コメディと幅のある物語のリズムと良く噛み合っている印象。
群像劇大好きマンにはたまらないと思う
頻繁に入る濡れ場(下品)もタッチが上品でオシャレに感じる
ちばてつや先生直筆の日本漫画家協会大賞 賞状を持ってメダルをくわえた山田参助さん。
— 松田洋子 (@matuda) 2019年6月8日
向田邦子ドラマの小林薫っぽさ。
「あれよ星屑」はあの圧倒的な画力だけでなく、当時の感覚や風俗や軍服をちゃんと調べて専門知識を持つ方たちに取材したからこそ絵にドラマや説得力があったのですね。 pic.twitter.com/bkFJXrede8
終戦語を描いた傑作
終戦直後の焼け跡で繰り広げられるお話ですが、これだけ濃い話はなかなか読めない
読売新聞にも読者の感想が掲載されていましたが、漫画の面白さもさることながら、絵のリアルさ、古典的な漫画表現が違和感なく共存していて凄い
言葉のセンスと膨大な知識、登場人物たちのいきいきとした会話劇
勝新「兵隊やくざ」岡本喜八監督「独立愚連隊」のエッセンスがたっぷり入り、バロン吉元を彷彿させる見事な作画で完成させた古くて新しい戦争漫画。
あれよ星屑:最後に
個人的に近年で最も記憶に残る戦争漫画です。
改めて常に戦争をテーマにした作品は更新され続けるべきだと実感しました。
山田参助さんはもっと注目されて欲しいと思ってた作家さんです。
セクシャルな描写も多く万人におススメし辛く、知名度がそこまで高くないように思えますが、唯一無二の「本物」の作品なのでこれを機に是非ご覧になって観て下さい