あらすじ/感想『BEASTARS』肉食獣と草食獣が共存する社会を描いた傑作

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『0BEASTARS』の感想とあらすじ紹介記事。

肉食獣と草食獣が表向きは人のように共存してる世界で、生まれ持った本能に抗いながら、全寮制の学校へ通い生きるという擬人化された動物たちが織り成すレベルの高い群像劇を描いたこの作品のあらすじや読むうえで注目すべき見所などをご紹介していくんで是非最後までお付き合いください。

 

 

合わせてどうぞ

 

『BEASTARS』について

まずはアニメ化が決定し注目を浴びる『BEASTARS』のあらすじと作品の概要につてい見ていきましょう。

 

作品の概要やSNSについて▼

作品情報

 

あらすじ▼ 

こんなお話!

肉食獣と草食獣が共存する世界。そこには、希望も恋も不安もいっぱいあるんだ。チェリートン学園の演劇部員レゴシは、狼なのにとっても繊細…

草食と肉食が平和に共存する動物の世界の学校を舞台に、ある日ヤギの男の子が肉食獣によって食殺された事件が起きる。

この食殺事件を主軸に、主人公のオオカミ(レゴシ)とウサギ(ハル)ちゃんとの恋模様や肉食動物、草食動物としての本能や葛藤で悩んだり、恋で悩んだり、ある事件を解決すべく動いたり…する物語

ジャンル自体はいわゆる青春群像劇タイプの作品で、動物が人間の知性と理性を備え、身体の体型もそれに近いものの、でも動物としての習性や本能もしっかりと在る。そんな登場人物たちが繰り広げる物語がとても面白く深い作品です。

 

全員動物『BEASTARS』の主な登場人物

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次に『BEASTARS』の登場人物を紹介していきます。学園モノでありながら登場人物が皆動物、その設定を活かし各人物が掘り下げられていて物語が膨らみ、登場人物によって織り成されるストーリーは必見です。

 

レゴシ

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(出典:『BEASTARS』)   

高校生のハイイロオオカミ、レゴシ君17歳

肉食で力も強いが優しくて控えめな性格で演劇部の裏方を務めている。

同級生の「ウサギ」を好きになってしまうが、恋なのか食欲なのか葛藤している。静かに話す青年で、めちゃくちゃ繊細で、でもオオカミってだけで恐れられ嫌われて生きて、オオカミであることはコンプレックス、そんなレゴシ君。

臆病なところ、カッコ悪いところ、悩んでいるところ、とても優しいところ、全てが魅力的に感じる。決してカッコ良くはないんだけど、とても魅力的なキャラクター。

 

ルイ  

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(出典:BEASTARS)

端正な顔立ちと、頭が良く、演劇部の役者長にして、肉食動物達にも一目置かれている学園のリーダであり看板スター。

草食動物である事に高いプライドを持っており草食獣故の弱み、自分自身の弱み、肉食動物の生き餌としてしいくされていた過去、全部抱えつつも草食獣という立場で全ての動物よりも強くあろうとする信念、完璧でいようとする強さ、かっこよすぎる。

 

ハル

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(出典:BEASTARS)

主人公の狼・レゴシ。その彼女である、ウサギのハルちゃん。

彼女が出てくると、一気にリアルな青春モードになって面白い。男の想像する「しなやかで優しい聖母のようなヒロイン」という純真無垢なヒロインではなくて、すごい生意気で、強くて可愛くて奔放である程度遊び慣れているヒロイン

女性作家にか描けないであろう、ハルを誕生させたことは『BEASTARS』の偉業と形容したくなるほどの象徴的なキャラクター(個人的に好き)

 

ジュノ

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(出典:BEASTARS)

演劇部に入った1年、同じハイイロオオカミである主人公に惚れている。

しかし主人公はウサギであるハルに対し好意を抱いているため、いわゆる負けヒロイン的な立場、「自信過剰で自分は全てを手に入れられると思い込んでいる」評されるほど強欲で、容姿にも自信を持ち自信家

恵まれた容姿から他の部員に妬まれていたが、社交的・家庭的で明るい振る舞いで、上手く立ち回り演劇部内での信用を獲得していく。

 

ピナ 

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(出典:BEASTARS)

容姿端麗・女遊びが趣味・自分に絶対の自信があるピナ

『わぉ!』『僕の取り柄はルックスだけです』『なんで恋人を1匹に絞らないとみんな怒るんですか?』『モラルなんてものは僕らに何も与えてくれないじゃないですか』などと発言する自他共に認める1年生の新入部員の美少年後輩。

主人公ら目上の動物を平然と侮辱するなど、最初「なんやこいつ」って思わせといて、ひょんな事から主人公にとって唯一の味方となるという、最初はいけ好かないけど、好きになっていく、いかにもオタクが好きそうなキャラ

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(出典:BEASTARS)

 

リズ 

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  (出典:『BEASTARS』)   

レゴシと同じ演劇部の美術チームに所属しているヒグマ

いつもニコニコと穏やかな性格で、マスコット的な存在。ハチミツが大好物。みんなに慕われる優しい性格と、ヒグマとしての本能がめまぐるしくせめぎ合う、過去を美化して反芻してるおぞましさが残る哀れなキャラ

 

ジャック

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(出典:BEASTARS)

主人公レゴシの親友であり僕の推し、ラブラドールレトリバーのジャック

一時期唐突にジャックとレゴシの過去を描いたことで、ジャックに食札事件の犯人説が立ち込めていたけど、犯人でなくて良かった。

 

レゴム

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(出典:BEASTARS)

レゴムは主人公レゴシのクラスメイトのニワトリ

自分で産んだ無精卵を売店に卸すバイトをしており(この世界ではポピュラー)、良い卵を提供するために日頃の運動や自己管理を怠らない。気高いニワトリ、無表情でストイックでちょっと意地悪だけど憎めない可愛いモブキャラ。

 

ゴウヒン

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(出典:BEASTARS)

ゴウヒンは、食殺を犯した肉食の獣人の捕獲・治療を行うために笹めっちゃ食って鍛えた筋肉ムキムキの医者

レゴシの師匠ポジション、腕っぷしが強くて知性がある中年のおじさんというパンダは可愛いイメージがあるのに、それとは真反対のかっこよさと渋さを持っていて素敵なキャラ。 

 

人種差別を獣人で表現『BEASTARS』の見所を紹介(ネタバレあり)

擬人化した動物の世界を通して人間の世界にもある人種差別、多様性についている『BEASTARS』にはたくさんの見所があるので紹介していきます。

 

青春漫画でありの多様性を描いた深い世界観

肉食と草食が「肉食の獣が本能を抑える」ことで共生する社会が舞台

動物たちの特性・特質と個性と、表面的には仲が良い肉食と草食の間には大きな溝があり、同じ草食同士でも種族の違いで差別などがあるので奥が深い 

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(出典:BEASTARS)

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(出典:BEASTARS)

多様性と向き合うことの難しさを考えさせられ、一匹一匹が大なり小なり、様々な悩みを抱え、必死に生き方を模索してたりと、脇役も含めてちゃんと息をしている、関係性、性差による問題提起を面白く分かりやすく表しテーマが深い

「多様性」が叫ばれて一人歩きしつつある昨今、「BEASTARS」が描いているのは身も蓋もない現実であり、本当の優しさと強さなんだと思います。

 

動物の持つ魅力を活かしつつ、社会問題をフューチャー

「肉食は肉食・草食は草食」擬人化したキャラは可愛いが、みんな仲良しそんなディ〇ニーみたいな話ではない。草食動物は肉食動物を恐れるリアルな動物の世界で、「連続草食動物捕食事件」が発生する所から物語が出発する。

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(出典:BEASTARS)

この漫画は、獣人という形で獣人の本能(食欲やら性欲やら)、人種差別や職業差別、金銭格差をしっかり書いてるのに生々しくないのが凄い、人間で描くとエグすぎるテーマを、動物という仮象をとることで、少年マンガとして描ききっていて、且つそれがマンガ大賞、アニメ化という形で受け入れられている。

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主人公のオオカミとウサギの恋模様

ヒロインのハルはドワーフウサギで、人懐っこく色んなオスと身体関係を持ついわゆるビッチ、そんなヒロインを好きになる主人公レゴシ、その他の学生の恋愛模様も素敵、肉食が草食を追いかけるのは、恋なのか本能なのか…。

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(出典:BEASTARS)

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(出典:BEASTARS)

学生の恋愛を主軸に動物の本能的な面が見えてくるのかと思いきや、それだけじゃなく、学校と言う名の閉塞的空間、異種結婚の禁止とか、色んな社会が凝縮されており、どこを取ってもレベルの高い構成

 

タイトルの考察(演劇部)

『BEASTARS(ビースターズ)』というタイトルの本作だが、「BEAST(獣)+STARS(スター・)」で擬人化された獣のたちが、演劇をやっているという作品の内容に沿ったタイトルだと思ってたけど、『BE A STAR』(で「スターになりたい」なのかもしれない』

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(出典:BEASTARS)

作品尾内容自体も、アラン・ムーア並みに肉食と草食が共存してる社会とはどういうものかってことを考察してて巻を覆うごとに凄い。

 

作者の板垣ぱるさんは刃牙の作者の娘さん? 

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実はこの漫画の作者板垣ぱるさんは刃牙の作者の娘さん説があり、25歳という若さで「漫画大賞」を受賞、9巻時点で累計150万部、2019年アニメ化と、父娘揃って凄い才能である。

 

板垣巴留さんの新作短編〝BEAST COMPLEX〟

「BEASTARS」作者板垣巴留先生が描く動物版短編集「BEAST COMPLEX」

肉食獣と草食獣が共に暮らす、BEASTARSの世界観まんまのお話、「BEASTARS」のエピローグ、スピンオフ的な話も収録されているので、続けて読むとめちゃくちゃ面白い。当作品は動物の種族を敢えて特定の人種のメタファーとして描いていないため、より普遍的な偏見や差別についての寓話になっているのが超良い。シリアス回とギャグ回との振り幅も相変わらず天才的です。

 

群像劇の傑作『BEASTARS』

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本当にそれぞれのキャラクターの心理描写が細かいし、深い所まで潜らないと見えないような、とても奥行きがあるキャラクターばかりです。

確実に起こり得るであろう社会問題や、それを誤魔化し生きる大人や、つい過敏に反応してしまう若者の心を繊細にしかし深くエグりだしている、動物たちの擬人化学園群青劇、「けものフレンズ」よりドラマチックで、「ズートピア」より詩的で思慮深い感じの作品です。面白い漫画が読みたい人は読んでみて下さい。